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別に正義感が強いワケではない。
…ただ、弱い者イジメだけはほっとけなかった。
少し相手の攻撃をくらい唇が切れてしまい、それを弄くっていると前から誰かが手を振って走ってくる。
あれは数少ない在校生の中でも特に仲が良い親友と呼べる相手…天童慧だ。
慧は人懐っこい笑みを見せながらやって来た。
しかし近付くと、凜の口元を見て顔色を変えた。
「凜っ!どうしたんだお前」
「……あぁ、実は」
「また、やったのか?」
心配そうに慧が聞いてくる。
凜が喧嘩するのはこれが初めてではなかったから慧は知っている。
しかし、いくら弱い者を守るとはいえ凜が怪我するのは許せなかった。
慧はいつも持ち歩いている絆創膏をカバンから取り凜に渡した。
いくら何でも唇の横に触るのは恥ずかしかったから自分では手当てしなかった。
凜は「サンキュー」とお礼を言い、絆創膏を貼った。
慧は絆創膏よりも唇に目が行き、慌てて逸らした。
凜だけがよく分からなかった。
誤魔化すように慧が慌てて言った。
「ごっゴミ箱!!」
一瞬何を言ってるか分からなかったが、すぐに手に持ってる絆創膏のゴミの事だと気づき、近くにあったゴミ箱に捨てた。
すると、横に立ってた慧が凜を呼んだ。
「なぁ、こんなのゴミ箱にあったんだけど」
「…慧、汚いぞ?」
ゴミ箱にあるんだから綺麗なワケがないと思い慧に言ったが、慧は首を横に振った。
そして分厚い本を俺の前に突き出した。
「そんな事ねーって!!ほら見ろよ、ニオイとか汚れた部分が一切ないんだぜ?」
そして慧はニオイを嗅いでいた。
確かに見た目は新品のように傷一つないし、生ゴミ臭くない。
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