読み手の章ープロローグー

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自分の行動に苦笑いする。 まるで操られたような感覚でページを捲る。 とうとう最後のページになり、捲ろうとした途端に光が身体を包んだ。 眩しい光に腕で顔を覆う。 その時、本を落としてしまった。 そして凜の意識が遠くなった。 意識がない時間、頭の中で何かを呼んでる声がした。 俺を呼ぶ声……女の人の声。 ……ぁとりくん …そう「花鶏君」と呼んでいる。 ……花鶏君?あぁ、俺の名前か。 「花鶏君!どうかなさったんですか?」 「……へ?はぁ」 まだ寝ぼけているのか、ボーッとした顔で目の前の女性を見た。 前髪が長くて素顔が見えない顔で、かなり気弱そうな…先生、あぁそうだ……先生だ。 ………そして此処は御伽学院の渡り廊下だ。 あの記憶は、夢…か。 まさか、柄にもなくホームシックってヤツか? 片膝を床につき、寝ていたらしくて先生に手伝ってもらい立ち上がる。 若干足が痺れてガタガタする。 俺はあの光を浴びて、御伽学院の入学の証…称号を手に入れてしまった。 俺の称号は読み手といって、400年ぶりに現れた希少価値の存在らしい。 あの本を手に入れた翌日、家に御伽学院の理事長とかいう爺さんがやって来た。 そして俺を御伽学院に編入させたいと言い出してきた。 御伽学院に入ると将来を永遠に約束されたも同然と言われているから入りたい奴なんて山ほど居る。 勿論両親は嬉しそうに受けた。 ……俺の意思を完全に無視して… そして半端強引に俺は半日掛けて封鎖された御伽学院がある島に連行された。 最初に通されたのは御伽学院の理事長室。 そして御伽学院の本当の目的を話された。 一般の生活をしていた俺は、ファンタジーなんて遠い彼方のフィクションだと思っていた。 しかし、この御伽学院は称号を生まれつき持つ能力者の育成高等学校だと話された。 そしてその能力を使い、悪を倒す…なんて特撮系のようなノリだ。 俺は生まれつき称号というのを持った覚えがないと訴えると、あの本の光で俺は読み手と言われる称号に選ばれてしまったらしい。 実はあの本もカバンの中に入っている。 ……何だか、手放せなかった。 これも選ばれたからか、身体が勝手に動く。 あの本は御伽の書と呼ばれる本らしく、読み手以外は本を開けないらしい。 だから理事長も何に役立つ本か分からないらしい。
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