90人が本棚に入れています
本棚に追加
「なめんじゃねー!!」
その掛け声と共に少年の向かい側に居た男は拳を振り上げた。
男の拳が早かったのか……俺が駆けつけるのが早かったのか…分からない。
ただ、殴る時の感触が俺の手に広がった。
気付いたら少年の向かい側の男を殴り付け、少年を羽交い締めしていた男を少年に当たらないように蹴り飛ばしていた。
先生はオドオドしてどうしたらいいか悩んでいて、少年は唖然としていた。
「…はぁ、はぁ」
「……な、んで…誰だよお前」
少年は信じられないものでも見るかのように目を見開いていた。
俺の手にはいつの間にかメリケンサックがはめられていた。
……こんなの持ってたっけ?
不思議そうにメリケンサックを眺めていたら、後ろから誰かが立ち上がる気配がした。
「おいっ!!危ない!」
「……え?」
少年にそう言われて不思議そうに後ろを振り返ると蹴り飛ばした男が立ち上がり俺に殴ろうとしている所だった。
……油断した、と思っても遅い。
受け身の体勢を取り、目を瞑る。
しかし、いくら待っても衝撃は来ない。
ゆっくり目を開けると……そこには獣耳が見えた。
………耳?
「遼!!」
少年は獣耳の男をそう呼んでいた。
獣耳の男は殴りかかってきた男の拳を素手で受け止め、刀を男の首元に近付けている。
……それは一瞬の出来事だった。
男が苦しそうに呻くと受け止めてた拳を引っ張り、地面に叩きつけて男の顔の横に刀を刺した。
男から小さな悲鳴が聞こえた。
そして獣耳の男は小さな声で言った。
「……これは忠告だ、コイツに手ぇ出してみろ……二度と起きれないようにしてやる」
獣耳の男が離れると男達は急いで逃げていった。
最初のコメントを投稿しよう!