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「遼っ…」
「……拓磨、怪我は?」
「俺があんな奴らに怪我を負わされるワケねーだろ」
羽交い締めされた時はヤバかったくせに……と心の中で思っとく。
そうしてボーッとその場に居たのがまずかったんだろう。
獣耳の男は俺に気付き睨んできた。
そして舌打ち。
「…チッ、まだ居やがったか」
これはまさか、俺をあの男達の仲間だと思ってるんじゃないだろうな。
……冗談じゃない。
俺は反抗の意味を込めて獣耳の男を睨み付けた。
しばらく睨み合っていただろう。
そうしてると、後ろから弱々しい声で俺を呼ぶ声が聞こえた。
俺が後ろを振り返ると、顔が真っ青で早く此処から逃げたい気持ちを押さえている先生が居た。
……そういえば放置していたな。
「花鶏君っ…早くしないと暗くなっちゃうよ!!」
「……はい、今行きます」
時間的に暗くなるとは思えないが、素直に従う。
すると、逃げたと勝手に思ったのか…獣耳の男が怒っていた。
「待てっ!!」
獣耳の男が一歩前に踏み出すと、横に居た少年が止めた。
俺は一度も振り返らず先生に着いていき、渡り廊下を渡りきった。
あの二人が見えなくなり、先生が安心してため息をして…ビクビクしながら俺を見た。
「…あ、花鶏君はお二人と知り合いなんですか?」
「……今日此処に来たばっかだから知り合いなワケがないじゃないですか」
さっきの獣耳の男を思い出して、少し不快になりぶっきらぼうに答えた。
すると、先生は何度も謝ってきた(こんなのが先生で大丈夫なのか?)
……あの獣耳も何かの能力なんだろうか。
「先生、さっきの奴らは…」
「あぁ、赤ずきんちゃんとオオカミさんですか?」
先生は平然と意味不明な言葉を発した。
……オオカミはともかく、赤ずきんちゃんって何?
確かにあの少年は赤いバンダナしてたけど、ずきんじゃない。
……ってか、童話にそんなのがあった気がする。
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