1.銀色の瞳が語るもの

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1 「希咲、待てよ!走ったら危ないぞ!」 また、この夢……。 この夢を見るのは、何回目だろう…。 ああ、駄目だよ! 止まって! お願いだから、止まって! 鳴り響く車との衝突の音。 ざわめく人の声。 何故、あの時私は兄の言うことを聞かなかったのだろう。 今更ながら後悔の渦に蝕まれ、呑まれていく。 2 ここは、とある神社の居間の中。 「はぁ、またアンタか…。今日はなんの用だ?」 天霧刹那、18歳。 独特な雰囲気を持ったこの男。 実は霊能力者。 生れつき銀色の瞳をしている。 何もかもが見透かされてるような、そんな瞳だ。 「実は、また同じ夢を見てさ…」 彼の瞳を見て恐怖を覚える人も居る。 現に、私の友人はみんな刹那に恐怖を抱いている。 「ああ、アンタのせいでお兄さんが死んだとかいう、あの夢か?」 そうはっきり言わなくても…。 いや、それを話したのは私だけれども…。 希咲は苦笑いしながら、うんと頷いた。 「それで、アンタは俺にどうしろと?」 紺色の短髪で少しくせっ毛の入った髪を掻き上げながら、刹那は上から見下ろすように希咲に聞く。 相変わらずの態度ね…。 希咲は喉まで出かかった言葉を飲み込み、刹那の問いに答えた。 「私のせいで、お兄ちゃんを死なせてしまったのは本当に反省している。忘れる事は許されないし、この罪は一生背負う重い罪だと思う」 私がそこまで言うと、刹那は面倒臭さそうに溜め息を吐いた。 「俺は、アンタが俺にどうしてほしいのかを聞いている。前置きなんて聞いてる暇はない。時間の無駄だ」 相変わらず腹立つ言い方なのが刹那らしい。 怒りを超えて、逆に呆れしか出てこないわ…。 「何回も見るこの夢を、あまり見たくないんだ…。何回過去を見たって、今が変わる訳でもないから……」 希咲がそこまで呟くと、刹那は面倒臭さいといったような顔をしながら手を出してきた。 きっと、また金だのなんだのと言っているに違いない。 「夢を見なくなったら、聞ける指示には全て従う。これでどう?」 刹那は少しムッとしたような顔をしながら希咲を見た。 しばらくすると、「分かった」と言って部屋を出ようとする。 「待って、どこに行くの?」 刹那は足を止め、希咲に向いて馬鹿にしたような顔で言った。 「アンタは馬鹿か?それとも、頭のネジが外れているのか?夢を見ないようにするためには、まずそれなりの準備が必要だろ?」
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