第1話 Destiny~運命の序曲~

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賑わう街。当たり前のように過ぎ往く時間。見慣れた風景・・・。 「つまらん」 人が蟻のように蠢く様子を窓から見下ろしながらユアンは呟く。 「良いじゃない、平和で」 読み終えた聖書を本棚に戻しながらスーザンは答えた。 「平和過ぎるからつまらないんだ。もう少し“スリル”のある人生の方が楽しいじゃん」 ユアンは僕らに向かって言うと、もう一度蟻のような人混みを窓から見下ろした。 「スリルって、どんな感じのスリル?崖からバンジージャンプとか?」 僕がそういうと、ユアンはクスクスと口に手を翳しながら笑った。 「ちがうよ。シアンは相変わらず面白いことを言うんだから」 ・・・面白いこと、言ったかな? そう言わんばかりの表情をさせた僕に構わず、ユアンは続けた。 「僕の言ってる“スリル”は、“悪い意味”のスリルだよ?」 悪い意味?僕はその意味が分からず、「ふーん」と答えた。 ただ一人暗い顔をしている少女が、何故あんな顔をしていたのか、その頃の僕には知る予知すらなかった。 部屋に居ると、流石に暇になってきた。 僕らはとりあえず外へ出てみようといって、外へ出た。 サルエボ教会の鐘の塔に行きたいとスーザンが言ったので、僕らは鐘の塔へ向かった。 久しぶりに行く鐘の塔。 ユアンがグラマスに行ってから一度も行っていない。 「久しぶりね、三人で鐘の塔へ行くのは」 スーザンは懐かしそうに呟いた。 「そうだな・・・、僕はサルエボ自体が懐かしいよ」 スーザンも懐かしそうな顔をしていたけど、ユアンはもっと懐かしそうな顔をしていた。 「もう二度とここへは帰ってこれなくなるんだよね・・・?」 「うん。条約が出来たからね。でも、不思議と寂しくないんだ。心のどこかで、また会えると信じてる僕が居るから」 ユアンはそういって微笑んでいた。 「あ、ほら!もう少しで塔に着くよ!」 スーザンが塔へむかって指を指し、走っていった。 塔の下へ着くと、僕とユアンに向かって手を振り早く早くと急かせる。 「スーザンは昔から変わってないだろう?」 僕はユアンに聞く。 「そうだな。全然変わってないよ。スーザンも、シアンも・・・この街も」 ユアンはそういうと、僕の手を取ってスーザンのいる塔へ向かって走った。 「変わってない。だから、早く行かないとスーザンに怒られちゃう!」 ユアンは笑いながらそう言った。 「確かに、それは御免葬りたい!」 僕もユアンと笑いながら走ってスーザンの下へ行った。
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