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「二人とも遅い!レディーをこんなに待たせるなんて、一体どういう神経してるのよ!」
塔へ着くとスーザンは腰に手を置き立っていた。
「スーザンはレディーというより」
「ただの民だよ」
僕とユアンがそういうと、スーザンは更に怒った。
「もういい!私先に行く!」
そういって上へ繋がる階段を一人でどんどん上っていくスーザンを見て、僕とユアンも上り始めた。
「やっぱここの階段、キツイな・・・」
僕は息を切らしながら呟いた。
「だよな・・・。スーザン、なんであんな早く上れるんだ?」
ユアンも息を切らしながらそう言った。
遠くでスーザンの声がした。
「二人とも~、は~や~く~!」
スーザンは大きな声で叫んでいた。
僕とユアンは、お互いの顔を見て、はぁぁ~~、っと長いため息を吐いた。
やっとの思いで着いた塔のてっぺん。
いつ見ても良い眺めだ。
「ねぇねぇ、久しぶりに鐘の音を鳴らしてみようよ!」
スーザンがそういうと、僕もユアンもこくりと頷いた。
三人で鐘を鳴らせる紐を持ち、勢いよくそれを引いた。
カーンっと大きな音が鳴ったのと同時に、僕らは光に包まれた。
――――ッ!
気が付くとそこは見知らぬ世界。
ユアンとスーザンは意識を失っていた。
僕は二人を起こしてここがどこなのか、状況を飲み込もうとしていた。
「ユアン、スーザン、起きて!しっかりして!」
僕が何度か二人の名前を呼びながら起こすと、二人は目を覚ました。
「ん……、ここは?」
スーザンは辺りを見回しながら自分達が居た世界と違うと気付き僕に聞いた。
「僕にも分からないんだ。目を覚ますとここに居て…」
僕はそれだけ言って周りを見た。
「ここってさ、本に書いてた堕落園じゃない?」
ユアンはそういった。
「堕落園?あれは本の中の世界よ?実際では有り得ないわ!」
スーザンはユアンの話を否定した。
確かに、あれは本の中の世界だ。
普通に考えたら有り得ない。
でも、今ある現状も有り得ない。
「ならスーザンは、ここがどこだと思う?さっきまで居た世界とまるで違うこの世界。スーザンが否定した有り得ない現状が今ここにあるよ?」
ユアンはとても冷静に、でも、瞳の奥深くではとても楽しそうにしている感じがした。
「それは・・・そうだけど」
スーザンも認めるしかない状況に立っていたのか、ユアンの言葉に折れた。
「へぇ、人間だから馬鹿ばかりと思っていたけど、なかなか物分かりの良い奴らだナァ!」
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