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甲高い男の人の声が聞こえ、僕たちは一斉に声のした方を見る。
しかし、そこには誰もいなかった。
「どこ見てんだ?上だよ上!」
そう言われて、声の言うことに従って上を向くと、そこには黒い羽が生えた男が一人、灰色の羽が生えた男が一人ずつ宙に浮いて僕らを見下ろしている。
「ギャッハッハッハハハハ!見ろよシリウス!人間共の驚き様!」
黒い羽の男がシリウスという男に笑いながら話し掛ける。
「些か夢だとでも思っているんだろうな」
シリウスという男は、僕たちを見るなり嘲笑った。
「俺も契約してぇな!」
黒い羽の男はいきなりそう言い出した。
僕らには何が何だかさっぱり分からなかった。
スーザンは、今の状況より先に、ここがどこなのか気になっていたみたいで、宙に浮いている二人に声を掛けた。
「あの、ここはどこですか?貴方たちは一体誰なんですか?」
スーザンがそう聞くと、二人はこちらへ降りて近寄って来た。
「どうせそのうちまた会うだろうから教えてやる」
シリウスという男が口を開き説明してくれた。
「ここは、さっきお前たちが話していた堕落園だ。だが、普通の堕落園ではない。選ばれた奴しか踏み入ることが出来ない場所だ」
シリウスは黒い羽の男の方をチラッと見ては、またこちらに視線を戻し続けた。
「しかし、何がどう間違ったのか…。ここの堕落園も他の堕落園と同じく、天界の者または、地界の者しか入ることが出来ない。それなのに、三人の人間がここに居る。」
僕たちは顔を見合わせた。
何か悪い予感がした。
「本来立ち入ることが不可能な人間が、何故死んでもいないのにここに居るのか。もしこれが堕落園(ここ)での伝説通りなら、お前たちは必ずここの住人と契約しなければならない。さもないと、その魂が狩られるぞ?」
シリウスはニヤリと恐ろしく冷たい微笑を浮かべて付け足した。
「お前ら三人の中で、俺と契約する気のある奴はいるか?あれば今ここで契約を交わそう。交わせばそいつの命だけは守ってやる」
シリウスはそう言って僕たちを見下ろした。
僕たちは無言のまま下を向いていた。
シリウスは僕らを見兼ねたのか、背を向けて灰色の空を見上げて羽を広げた。
「気が向いたらいつでも俺を呼べ。その時はこう言え。【契約を交わそう。我が命に従え、堕天のシリウス】とな。そういえば俺はお前らがどこに居ようが関係なく現れる」
シリウスはそう言うと灰色の空に向かって飛び立っていった。
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