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ネフィリムの眼線の先で、両手のひらに光を抱いた魔導士の、その手の内に。
「…よく、見ておれ。ルスランの海の祠から今まさに酌ませた聖水だ」
ウンディーネの魔法でな、と。美しくも危うい光を放つ眼が聖水を見据える。
「まことに畏れながら、身に余ります…どうか」
唄を止めて、吟遊詩人は深く頭を垂れて懇願した。
ネフィリムが無事でいられなければ、直属の兵士たちに八つ裂きにされるのは吟遊詩人のほう。
それゆえに、吟遊詩人は気が気ではなかった。
だが、ここで聞き入れるネフィリムではない。
「寄越せ」
魔導兵が恭しくネフィリムの手に杯を差し出した。
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