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「ごめんな・・・ごめんな、お嬢様。」
「アルさん・・・。」
あの後、アルさんは扉を破って突入してきた。
まさか、あの地下室の扉が蹴りで壊されるとは、思ってもみなかった。
私は、アルさんの強さを過小評価していたのかもしれない。
「どうする、レイ?」
「はい・・・?」
「アン・フランシスは死んでしまった。お前は戸籍には載ってないから、これから仕事もできない。」
「そう言われれば・・・。」
「そこでだ。お前、オレと一緒に、宗教やらないか?」
「宗教?」
「そうだ。日本にある、都市伝説を元にした新興宗教。オレはそれの奉り神だ。」
「あれって、アルさんだったのですか?」
「そうだ。」
アルさんは遠い目をする。
「オレ達には、もう居場所が無い。とりあえず、そこでしばらく過ごしてみよう。いいだろう?」
「・・・はい。」
断る理由もない。
「・・・さあ、そろそろご主人様の遅すぎる援軍が来る。お前は残って、事情を説明してくれ。」
「アルさんは・・・?」
「オレの存在を、向こうは知らない。怪しまれるだろ?」
アルさんは出口に向かった。
途中、振り返って、こう言った。
「いっしょに頑張ろうぜ。優しくて強い、元執事さんよ。」
アルさんは嘘が下手だ。
明るく話す口元が、震えていた。
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