転倒の話

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さて、まずは何をしようかな。 私は紅茶を飲みながら考える。 もしかして、レイは昔も使用人だったのかも。 料理を作れるし、掃除も上手だし、従順だし。 だとすれば、どこかの家から追い出されたとか。 例えば・・・そう。大事な物を壊しちゃったりして。 なら、話は簡単。レイに何かを壊させましょう。 「レイ。今日はアールグレイが飲みたいわ。」 「かしこまりました。」 レイはまた、ティーカップを持っていった。 作戦開始! レイは再び、カップを手に、部屋に戻ってくる。そこを狙えば・・・。 私は、役に立ちそうな物を探した。 手っ取り早く壊させるなら、転ばせるのが一番。 転ばせるためには、思わず躓くような、丁度いい大きさの何かが必要。 重さもあった方がいいかも。 でも、そんな物はこの部屋には無かった。 ここは書斎。紅茶を飲みながら、本を読むためだけの場所。 どうしたらいいの・・・? 発想の転換が必要ね。 躓かせる以外にも、方法はあるはず! 人が転ぶパターンを、もう一度振り返ってみれば・・・。 そうだわ!転ぶといったら、バナナの皮! つまり、足を滑らせることが出来れば! レイの足音が迫ってくる。 大丈夫。これを使えば・・・! 私は本棚から分厚い本を取り出して、広げて床に置いた。 さあ。すてーん、と派手に転びなさい! レイがドアを開けた。 「お待たせ致しまし、わっ!」 目論み通り、盛大に転んだ。 いつもは固い真面目人間が、一瞬だけ素になっている。 なんて芸術的な・・・! そして、私は頭から紅茶を被った。
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