転倒の話

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-夜- 私は、夜の庭を歩いているわ。 抜き足、差し足、忍び足。 泥棒みたいね。 でも、私が歩いているのは、自分の庭。 これから、レイの部屋を覗くつもりなの。 彼のプライベートタイムにこそ、秘密が隠されている!そうに違いないわ! 私はお嬢様ですから、執事の個人情報を知る権利があります。 それに、レイはちょっと怪しいわ! そう。だから、この行為は正しいのよ。 私は決して、ストーカーなんかじゃないわ! レイの部屋の窓まで来たわ。 カーテンがちょっとだけ開いてる。無用心ね。 私は中を覗き込んだ。 「おお・・・。」 きちんと整理されてる。 流石はレイね。ぱっと見では、証拠は掴めないわね。 こうなったら、直接踏み込むしか・・・。 も、勿論、正当な行動よ! だって私はお嬢様だもん! それはそうと。 レイは随分と落ち込んだ様子ね。 昼の失敗を引きずってるのかしら。 だとしたら、悪い事をしたわね・・・。 レイは何やら歩き回ってる。 挙動不審よ?そんなことを外でしてたら、不審者だと思われるわよ? 詳しく例えるなら・・・。 夜中に家の中を覗くのと、同じくらい怪しいわ! 警察の人に連行されちゃう! レイはまだ回ってるわね。 何かを考えてるようね。 重い表情で、同じ動作を繰り返し続ける・・・。 しかし、不意にそれが途切れた。 レイが転んだの。 何もない場所で。 豪快に。 「格好悪っっ!!!」 思わず、口から叫びが出てしまった。 そう、心からの叫びが。 しかし、レイはすぐに立ち上がった。 そして、ベッドに横になってしまった。 私の声は聞こえなかったのかしら。 よっぽど気が沈んでたのね。 よくよく考えてみれば、今カーテンが開いてるのも、そのせいなのかも。
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