序章 虚栄の輝き

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ブラックニッカのネオンに見守られながら、夜のすすきのはいつも賑わっている。ある夜、欲望の交差点の真ん中に立ちながら、僕は携帯でお手頃な風俗を検索していた。 僕は当時、札幌近郊のリゾートホテルで住み込みのアルバイトをしていて、家の借金をひたすら返済していた。多いときは月に15万以上払っていたこともある。寮費や食費が殆どかからないとはいえ、手取りが20万前後の当時の僕にとって、それはとてつもなく巨額だった。 それでも残った5万弱の金。それだけあれば、月に一度くらいはすすきので王様になれた。そのイベントが生き甲斐だった。それがなければ、もうとっくに首を吊っていただろう。 それにしてもすすきのの風俗は安い。一番安いヘルスなら二千円でお釣りがくるくらいだ。僕は安すぎず高すぎず、つまりは無難な五千円くらいのヘルスを選択し、ビルに足を踏み入れた。 「今日はどんな自分を演じよう?」 そう考えている時間が、何よりも楽しかった。 「いらっしゃいませ。まゆか(仮名)です」 まゆかは小柄で、胸は小さいがなかなかいい形をした、いわゆる美乳の持ち主だった。まだ慣れていないのか、その表情はどこか硬かった。 「可愛いね。緊張しちゃうなー」 半分以上嘘の言葉を吐き、僕はまゆかとの会話を始めた。短い会話の中で、僕はまゆかの知識や判断力をある程度見極め、演じる自分を決めた。ズバリ『コンサル会社の取締役』である。まゆかはコンサルの意味も取締役の意味も良く理解していない。だからこそ好都合だった。どうやら、“若いのに難しい仕事をしている偉い人”というイメージを持ってくれたようだ。エロ小説を書く気はないのでプレイの描写は避けるが、色々やって帰り際には携帯の番号をゲットすることに成功した。登録の名前は『まゆか(コンサル)』である。まゆかがコンサルの人間なのではなく、コンサルの人間を名乗っているというのがポイントだ。当時の僕はこういうことを月に最低一度はしていた。
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