序章 虚栄の輝き

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それに比べて、遠距離恋愛をしていた当時の恋人ヒトミ(仮名)には気を遣いっぱなしだった。ヒトミは大学の部活の二学年下の後輩で、上昇思考が強くプライドの高い女の子だった。ヒトミと付き合い始めた頃の僕は、上場企業に内定が決まっていて、部活の大会でも関東上位の結果を出していて、おまけに奨学金、バイト代でかなり裕福な学生生活をしていた。きっと彼女の目にはそんな僕がとても輝いて見えたのだろう。しかし、家の借金を知り、会社員を辞めて住み込みのアルバイトを始め、心身共にボロボロになった僕にヒトミはもう輝きを見出だせなかったのだろう。電話をすれば「これからどうするの?」やら「二年以内に色々安定させなきゃ別れる」やら、プレッシャーをかけられっぱなしだった。それでも、形だけだとしても付き合ってくれていたヒトミには感謝をしているが、やはりそのプレッシャーは重かった。ヒトミだけではなく、友人、先輩、挙げ句の果てには後輩にまでプレッシャーをかけられる始末。一体いつからこんなふうになってしまったのだろうか。そんなプレッシャーたちから逃げ出すように、僕は夜の小さな小さな王様になっていた。
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