第四章 大樹のように

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「考えてみたら、祖父は私の大学生活どころか、中高生の頃も知らないんですから」 「そうなんですか?」 「最後に会ったのが小学生の頃ですから」 「…そうでしたね」 母が敬遠していたから。というのは、最早言い訳なのだろう。 大学生になるのと同時に家を出て、一人暮らしを始めた自分なら、会おうと思えば会えていたはずだった。 そうしなかったのは、自分の中に祖父への後ろめたさがあったのだろう。 「私が人との関わりを避けていたことなんて、知らないはずなんです」 「なるほど」
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