第四章 大樹のように

17/17
前へ
/109ページ
次へ
この二つの約束を胸に、これまでがんばってきた。 軌道に乗って、喫茶店は賑やかに、多くの笑顔が生まれる場となった。 いつしか約束は奥の方へしまわれ、喫茶店の営業することが目的になっていた。 「初心忘るべからず、だよな」 喫茶店を流行らせることが目的じゃなかった。 喫茶店はあくまでも手段であって、本当の目的は祖父のように、客が安らげる時間を過ごしてもらうことだった。 いつしか手段と目的が入れ替わっていたことに、今さらながら気づかされる。 「また、明日からがんばるね。今度こそ、目的を見失わないように」 かつて約束を交わしたベンチに腰掛け、この公園のシンボルともいえる木を見ながらつぶやく。 「二人が好きだったこの公園の大樹のように、広く枝葉を広げてみせるよ」
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加