第四章 大樹のように

2/17
前へ
/109ページ
次へ
晴天の割には体の温まらない空気が、これから訪れようとしている冬を表していた。 周りに人影がないことも、寒々しく感じる原因かもしれない。 そんな中、譲治は亡き祖父の墓に前に立っていた。 「…こんにちは、おじいちゃん」 当然、帰ってくる言葉はない。 「喫茶店もだいぶ賑わってきたよ。おじいちゃんのお店とは、雰囲気が違うかもしれないけど」 そう言い、墓前に花を差し水をかけながら、譲治は一人亡祖父に向けて語りかけていた。 一通りの作業を終えて、譲治は荷物から水筒を取出し、同じように取り出したカップへと注いでいく。 「はい、これが今、うちの店でお勧めのコーヒーだよ」 そう言って、カップを墓前へと供えた。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加