第四章 大樹のように

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少し歩くと、さっきまで立っていた墓の裏手に回りこんだ。 そして、ちょうど裏側に回ったところで立ち止まる。 「お久しぶりです、…寅さん」 そこにはもう一人の恩人の墓が建っていた。 「寅さんも、どうぞ」 先ほどと同じように、譲治はカップを供えた。 黒月はその間、何も言わずに見ている。 「…ようやく分かったんですよ、寅さん。おじいちゃんが何を遺してくれたのか」 風が吹いて、木々の葉をざわめかせる。
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