第四章 大樹のように

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「だから、私は喫茶店を継ぐというの名目で、実際には私の社会性を持たせることが遺志だったんだと思いました」 「…過去形なの?」 「えぇ。と言っても、三日前まではその考えを改めてはいなかったし、考え直すこともしていませんでしたけど」 譲治が黒月を追い越して、正面に立つ。 「何故、考え直したの?」 「貴方の、諦めの悪い依頼人のおかげですよ」 「…あの二人?」 答えが予想もしないことであったのか、黒月の表情が大きく動いた。 その様子を見て、譲治が声を上げて笑う。 「失礼。思ってもいなかったみたいですね」 「どう考えてもつながらないからね」
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