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街を覆う魔法障壁が無くなれば、たちまち魔物の巣窟と化してしまうだろう。
この街、プリマヴェーラはユリクにとって故郷のようなものだ。
それに、キャサリンやレンドといった友人もいる。
ピュアの放った言葉がハッタリかどうかはわからない。
ユリクは深くため息をつくと、重い腰を上げて黒の少女を追って出て行く。
明るくなりかけている靄がかった空の下には、まだ薄い青色の結界が存在していた。
「やっと出てきたわね」
ピュアが腕を組んで仁王立ちしている。
満足そうなニヤケ顔が付属していた。
「言っとくが、一緒に行くつもりはねえよ」
「ふーん。ハッタリだと思ってんの?」
冷笑をそのままに両手を上空にかざすピュア。
すると、その色白な掌を淡い赤色の光が包んだのだ。
それに呼応するように上空の膜が波打ち始める。
「マジ……かよ」
ユリクは驚愕によって目を見張った。
相対する少女の手が更に眩しく輝く。
このままだと本当に結界が消えてしまうかもしれない。
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