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「ハッ、『モンスターフォール』ねぇ」 吐き捨てるように青年は言った。 そして、机上に置いた分厚い本への目線はそのままに酒瓶を手に取り口へ運ぶ。 この世界的な大事件が起きたのは今から一千年以上も前だ。 今では大きな街こそ結界により守られているが、外には異形の生物、魔物が住み着いている。 それによって力を持たない人々は街の外に出ることは滅多に無い。 真っ昼間から酒を飲む青年、『ユリク』ももう数年街の外には出ていない。 ユリクの住むこの街は『プリマヴェーラ』というこの国ではそれなりに大きな街だ。 彼はここで何でも屋を営んでいる、といっても依頼等は来たことがないのだが。 「さてと」 ユリクは面倒くさそうに腰を上げ、銀色の髪の毛で覆われた頭をポリポリと掻いた。 仕事の時間だ。 何でも屋を営んでいても収入ないわけだから、金を稼がなくてはならない。 その為の仕事に出掛けるのだ。
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