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「うぃーっす」
力の無い声と共に中に入るユリク。
店内はいくつかのテーブルに数人が座れるカウンター席というごく普通の酒場である。
客はいない。
これもまたいつもの光景だ。
「ったく、あんたまた飲んできたのかい」
カウンターの向こう側から呆れたように放つ人物が一人。
純和風の着物、皺だらけ顔面に厚化粧、店主『キャサリン』である。
くわえていた煙草を指で挟み、煙りを吐き出す。
「うるせーよ」
ユリクはいつもの様に返しながら店主の正面に腰掛ける。
「一段とまたどぎつい顔してんなぁ」
目を細めて放つユリク。
実はこの店主、一見すると初老の女性だが、その顔にはドーナツのような青髭、ゴツゴツした体つきをした正真正銘の男である。
「あんたみたいな毎日プー太郎やってる男に言われたくないやね」
そう言って再び煙草の煙りを吐き出すマスター。
これもまたいつものやり取りだ。
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