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この女性、いや親父との出会いは八年程前だ。
幼少時代を生きた町を出た後、荒れ地を放浪しているところを拾われたのだ。
「しょうがねぇだろ、依頼が来ねぇんだから」
ユリクは愚痴を吐きながらグラスを傾ける。
その中身は水である。
毎日のように酒を飲むが、別段それが好きというわけではないのだ。
一応仕事という名目でこの酒場に訪れるが、客は滅多に来ることは無い。
ただ夜中まで雑談しつつ時間を潰すといった具合だ。
「キャサリンさん、今戻りましたぁ」
店内の空気を変えるかのような爽やかな声と共に一人の男が入店してきた。
「よう、レンド」
ユリクは酒瓶の箱を担いでいる顔馴染みに向けて手刀を切る。
「相変わらずだな、お前は」
レンドと呼ばれた男は仕入れてきた品物を棚に収める。
彼は ユリクと同年代の友人だ。
友人という響きにくすぐったさを感じるが、いつも連んでいる。
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