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そのまま動きを止めるユリク。
そして腰に差した剣の柄へと手を添えた。
刹那、空気の乱れを察し、素早く身を翻す。
静寂の街に響く金属音。
「なんだ、てめェ……」
全身黒づくめの何者かが短剣を振り下ろしたのを、ユリクが鞘に収めたままの剣で受け止めたのだ。
ナイフを弾き、後方へ飛び退いた小柄な何者かは、こちらに向けて両手を翳す。
『フレイム!』
女の声が発せられると同時に相手の手が淡い赤に染まり、握り拳大の炎の玉がユリク目掛けて発射されたのだ。
「……魔術かよ」
ユリクは驚愕の表情をつくり、体を横に転がして火玉を避ける。
しかし、もう一度さらにもう一度と火の玉が飛んできたのだ。
「おいおい、何だってんだよ」
迫る赤玉を飛び上がって避け、あるいは屈んでやり過ごすユリク。
だが、あることに気が付いた。
後方から木材の燃える臭い。
標的を失った火の玉がユリクの自宅に直撃していたのだ。
「うわっ! やべェ」
『アクア!』
狼狽するユリクの背から、ゴムホースから放たれたかのような水柱がパチパチと燃える炎へと降り注ぐ。
黒の相手が発したものだ。
消火を確認したその者は、深く被っていた黒いフードを外す。
「さすがの身のこなしだわ、ユリク・リバイバル」
少女の顔が露わになったのだった。
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