キミと映画

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「……うっ」 〈ちょ!? 加奈っぺ大丈夫!?〉 「大丈夫じゃないよ! 何なのこの映画は! 何で茶髪のキミだけがあんな思いをしなきゃなんないのよ!」 〈……茶髪のキミ?〉 「黒髪と主人公はずるいよ! 自分達だけ幸せになって!」 〈そ、そうだね〉  エンディングが流れる中、私は二人の幸せを祈る彼の姿に号泣した。  だって世の中は不平等過ぎる。  恋人からも親友からも裏切られた彼は、これからどうするの?  なのに彼は二人を責めもしないで、ましてや幸せなんかを祈ったりして。 「お人よしにも程がある!」 〈……加奈っぺ〉  と、私を宥める先輩の声はいつもより力ない。 「どうしたの?」 〈……何か頭が痛いかも〉 「ええ!? とりあえず外に出ようか!」 〈うん〉  私達は急いで劇場から出ると、ロビーにあるソファーに腰かけた。
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