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「はい。飲み物」
〈……ありがと〉
先輩は、精気のない顔で飲み物を見つめる。
「頭まだ痛い?」
〈治まってきた〉
「良かった。ところで、いつから痛くなったの?」
〈……突然、最後の方で〉
「……そうなんだ。どうしたんだろうね」
〈……本当どうした〉
と、言葉を切った先輩は突然ガバッと顔を上げた。
「な、何!?」
しかし先輩は何も答えない。ただ、虚ろな目で前を通る人の群れを眺めている。
〈……ここ、来たことがある〉
「え?」
〈……こうやって、この場所に座ってた〉
「本当!?」
ついに記憶が戻り始めたのか、先輩は蟀谷を手で押さえながら顔を歪める。
〈……あの映画も観た〉
「いや。そんなはずはないよ。翔先輩は、観たがっていたって言ってたから」
〈いや。間違いないよ。……俺は観た〉
……どういう事だろか。
もしそれが本当ならば、翔先輩は拓斗先輩が映画を観た事を知らないということになる。
ならば、沙耶先輩は?
もしかしたら、この事を知っているかもしれない。
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