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まるでスローモーションのようにゆっくりと振り下ろされる細い腕を、私はただ呆然と眺めていた。
__バチン!!
乾いた音が、廊下に響き渡る。
「ふざけたこと言わないでっ!」
悲鳴に似た叫び声に、やっと意識が引き戻される。
……ええぇぇ!?
……どうして私が、叩かれなきゃいけないの!?
「拓斗は死んだのよ! ここにいるわけがないじゃないっ!」
「……はい?」
呆然と立ち尽くす私を置いて、走り去る沙耶先輩。
そして、仰天顔の先輩方。
__それから、噂は瞬く間に広がった。
実は私が拓斗先輩の浮気相手だったとか。私が略奪しようとしてたとか。
反論する気力もない私は、教室の隅でただ頭を抱えていた。
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