キミと映画

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〈しょうがないよ。普通はなかなか受け入れられないと思う〉 「そうなのかな? 私はすぐに受け入れたけど」 〈それは、姿が見えたからだよ。見えない人は信じがたいんじゃない?〉 「そっか」  先輩と話している私を、涼太は蒼い顔で眺めている。 「……お前。その芝居やめろよな」 「芝居じゃない」 「じゃあ、何なんだよ」 「だから、先輩がいるって」 「そんなわけないだろっ!」  突然、声を張り上げた涼太に私達はビクリと肩を上げる。 「先輩は死んだんだぞ!? そんないつまでも未練がましいことを言うなよ!」  その言葉にカッとなった私も、負けじと声を張り上げる。 「はあ!? 未練とかそんなんじゃない! 本当にいるの!」 「いるってどこにだよ!」 「ここに! 私の隣にいるのっ!」 「見えねーよ!」 「知らないよ! 何故か私にしか見えないんだからっ!」  猫の喧嘩のように、顔を近づけ睨み付ける私と涼太の間に先輩が割って入る。 〈お、落ちついて!〉 「落ちつけるわけないでしょ!」 「だからお前! その演技は!」 「演技じゃないってばっ!」  先輩の身体を貫通した私の手が、涼太を突き飛ばす。  すると、尻餅をついた涼太は口をポカーンと開けたまま固まっている。 「何でわからないの!? 何で見えないの!? ここにちゃんといるのにっ!」  悔しくて震える唇を噛みしめていると、先輩が私の肩をそっと抱いてくれる。  ……先輩はちゃんとここにいるのに。 「……本当なのか?」  涼太の掠れた声が、静かな部屋に響く。コクリと無言のまま頷くと、床に涙がポトリと落ちた。 「……でも、先輩には記憶がないの」 「え?」 「……だから、記憶を取り戻す為に翔先輩や沙耶先輩に近づいた。それと、先輩の死が本当に自殺なのかを確かめる為に」 「……マジかよ」  すると、涼太は唸りながらオレンジ色の頭を抱えた。
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