キミの彼氏

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 その瞬間、玄関のベルが鳴る。 「早く用意しなさい! 涼太君が来たわよ!」  ……涼太?  私はトボトボと廊下を歩くと、玄関の扉を開けた。 「はい」 「お前。何で、まだパジャマなんだよ?」 「え? ……ああ」 「どうした? 顔色が悪いけど」 「先輩が」 「先輩?」  と、涼太が首を傾げる。 「……先輩が、朝起きたらいなくて」  __いない。  その言葉を口にした瞬間、無意識に身体が震える。  ……もし、涼太まで先輩のことを知らないと言ったらどうしよう。  全ては夢だったということだろうか。  しかし、涼太は一瞬目を見開くとすぐに笑った。 「良かったな。きっと成仏したんだろ」  ……やっぱり、先輩と過ごした日々は夢ではなかった。  ……先輩はちゃんと昨日まで私の隣にいたんだ。 「……だけど、どうしていきなり?」 「もうあんまり気にするな? とりあえず良かったじゃないか」  ……良かった? 「……何で? ……全然良くないじゃない。先輩は、まだ記憶も戻ってなかったのに……。成仏なんて出来るはずがない」 「でも、もういないんだろ? なら、成仏以外に何があるだよ?」 「……旅行とか」 「バカ。幽霊は旅行なんてしない。それより早く用意をしろ」 「……嫌だ。こんな状況で、学校になんて行けるわけがないでしょ?」  すると涼太は大きな溜め息を吐き出す。 「加奈?」 「だって、先輩がいないんだよ?」 「だからそれは」 「……探さないと。先輩のこと探さないと!」 「加奈っ!!」  突然、声を張り上げた涼太にビクッと身体が萎縮する。
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