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しかし、涼太の視線はすぐに私の斜め後ろを見つめる。
ハッとして振り返ると、心配そうにリビングからこちらを覗くお母さんの姿があった。
「……おばさんに、心配をかけさせるな」
その言葉に、震える唇をグッと噛みしめる。
……涼太は正しい。
お母さんは何も言わないけれど、最近の私の言動を心配していることを知っている。知っていながら私は気づかないふりをしていた。
だって先輩には私しかいないから。誰に何と言われようと、力になりたいと思っていた。
だけどその先輩はもういない。
「……着替えてくる」
私は速やかに自分の部屋に戻ると、制服に着替えて家を出た。
大きな公園の横を通り過ぎても、そこに鳩がたくさんいても、何故か先輩はいない。
あの変な歌も、もう聞こえない。
……先輩?出会いが突然なら、別れも突然なの?
私は、泣き出しそうになるのを必死に堪えながら学校へと向かった。
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