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自分の教室に入るとそれまで固まって話していた生徒たちが、顔をひきつらせながらバラバラと散っていく。
いつもなら「おはよう」と、どこからともなく聞こえる声も今日はない。
きっと、先輩の浮気相手だとかそんなくだらない噂を信じているのだろう。
……だけどそんなのはもうどうでもいい。相手にもしたくない。
__先輩はいなくなってしまった。
その現実を自分の中で処理することで、精一杯だから。
「……加奈。おはよう」
と、美樹が心配そうな顔をして駆け寄って来る。
「おはよう」
しかしどうやら涼太が昨日の事や先輩の事を説明してくれたのか、美樹はそれ以上は何も聞いてはこなかった。
だから私は自分の席にゆっくりと腰を下ろすと、四角い窓から雲一つない空を見上げる。
……先輩は、あの空のどこかにいるのだろうか。
「三橋さんいる?」
呆然としていると、どこからか自分の名前を呼ばれた気がして辺りを見渡す。
するとクラスメイト達が、一斉に教室の後ろの扉を見ていた。
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