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「翔にも拓斗の事を聞いていたでしょ?」
「……それだけの理由でですか?」
「え?」
「……私が、翔先輩に話しを聞いたから。……ただそれだけで紗耶先輩は疑っているんですか?」
すると、三人は少しバツが悪そうな顔をした。
「……どうしてですか? ……そんな事、沙耶先輩が一番わかっている事じゃないんですか? ……どれだけ先輩が沙耶先輩を愛していたのか。……沙耶先輩が一番っ……」
目頭が喉が焼けるように熱い。なのに、手足が氷のように冷たくて、私は震える唇を噛みしめる。
……こんなの悲しいよ。
私のせいで先輩が沙耶先輩を裏切っていたのではないかと疑われている。
確かに幽霊になった先輩は、何も覚えていないから私を好きだなんて言っこともあった。
だけど、沙耶先輩が疑っているのは生前の先輩の想いだ。
……どうして?どうしてそんな噂に、沙耶先輩は騙されるの?
あんな近くで先輩の温もりを、愛を感じていたくせに。
胸がムカムカして気持ち悪い。
泣きたいのを我慢している時の感覚に似ているけれど、そうじゃない。
……悲しい。
……悔しい。
だけどそれ以上に、私は腹が立っていた。
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