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「……先輩」
教室の、一番後ろの席を囲むクラスメイト達。
その間から見えるのは、ハニーブラウンの髪。そして目尻にできたシワに、楽しそうな笑い声。
だけどそれはいつも一瞬。
瞬きをした次の瞬間には、悲しい現実が見える。
誰もいない席。そこには、白い花瓶と俯いた白い花だけが存在する。
先輩がいなくなったクラスは、まるで熱を無くしたようにどこまでも冷たい。
「加奈。行くぞ」
「……え? ……あ、うん」
通りすがりに、いつも見てしまう。見なければ良いとわかりながらも、避けることすらできない。
だって明日になったら、またあの場所で先輩が笑っていそうだから……。
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