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彼が視線をやるのはもちろん町の広場。
微かに聞こえる笛の音と笑い声。
村人は帰らぬ仲間達に今日も自分達の無事を伝え、心配するなとめいめいの好きな花を広場の中心に飾っていく。
「ま、便りのないのは元気な証拠とかもいうけどね」
「…そんなもの、あいつには必要ない」
いつも返事のない、独り言のような言葉に答えがあり彼が驚いている間に男は風の音を残して消えていた。
彼が目を瞬かしてもそこにはすでに影すらも残っていなかった。
「素直じゃないねぇ、あの人も」
彼は苦笑を浮かべ立ち上がり広場へと向かった。
その手に”たまたま”隣に落ちていた白い小さな花を持って。
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