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一瞬――どう答えたもんかと考えたけど、別に自分を良く見せたい訳でもないから素直に「あるよ」と答えた。
「じゃあ最近ついた嘘は? 」
まるで僕がそう言うと想定してたかのように、少女は僕の答えに対してすぐに次の問いを投げかけてきた。
「そうだな~。本当は可愛いのに可愛くないって言った事かな……」
とっさに頭に浮かんだ事を何も考えずに言ったもんだから、言った瞬間にしまった。と思った。今の嘘をついたのは少女本人に対してじゃないか。
それに少女も気づいたのか、クスクスっと笑うと
「可愛いって思ってくれてたんだ? ふふ、ありがと」と言った。
「いや、別に……」
思わず目を伏せてしまう。少女の笑顔が真夏の太陽よりも眩しく輝いて見えたのだ。
その恥ずかしさを隠すようにフェンスから下を眺めてみるけど、どうやら何の役にもたたないようだ。
次に某巨大百科事典サイトを使う時は『恥ずかしさ』について調べようと、僕が密かに決意を固めていると、少女がポツリと呟いた。
「私はね、嘘をついた事ないの……」
その言葉、言い方があまりにも寂しそうで、僕は自分の言葉を押し殺して、少女の言葉を黙って待つ事しか出来ない。
「いつも正直に言っちゃうの。多分だけど虚言癖の逆みたいなものなんだと思う。いつも思ってる事が正直に口から出ちゃう。だから皆を傷つける。空気が読めないって言われる。ねぇ少年。私どうしたら良いの? 」
さっきまでと一転して、泣きそうな顔で少女がこちらを見る。その瞳には既に涙が溜まり始めていて、瞳のダムがいつ決壊してもおかしくない。
助けを求める完璧少女は、他の人と何も変わらない……1人の女の子だった。
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