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嘘って言うのは事実に反する事、またはそれを語る事って意味らしい。
多くの国、文化によって嘘は悪い事とされているけど、反面、ある程度の嘘が無いとコミュニケーションが滞るらしい……
つまり嘘っていうのはコミュニケーションという機械に必要な歯車みたいな物。
「じゃあ必ずしも嘘が悪い訳ではないんだ……」
誰とも無く呟いてみたけど、周りからのリアクションは無い。当然だ。だって僕は今1人なんだから。というより午前10時17分は授業中だ。今頃他の人は教室で退屈な授業を聞いている。
だから僕の呟きを聞いていたのは風とかそういうのだけ。
屋上のフェンスに背中を預けてる状態で携帯を手にしながら思わず苦笑してしまう。
風が聞いてるって……我ながらガキ臭いな。
携帯の画面には恐らく世界で一番有名な百科事典の検索ページが開かれている。前述したように、検索ワードは『嘘』だ。
ネクタイを緩めて腰を落とす。制服が汚れるのなんてお構いなしに地べたに座りこんでゆっくり息を吐いた。
天気が良いな――
蒼い空をベースに白い雲が所々に散らばっている。雲量4ってとこかな? 快晴とは言えないけど、これぐらいの方が落ち着く。
「な~にしてんのかな少年? 」
頭上から降りかかる声は、どうも僕を落ち着ける気は無いようだ。勿論、嫌な気分はしない。
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