―嘘の定義―彼女の嘘と僕の真実

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僕が初めて少女に会ったのは放課後の屋上だったと思う。 そのころ、1人で屋上に来て黄昏るのが僕の日課みたいなもんだった。1人でフェンスに背中を預けて、某巨大百科事典のサイトで他愛もない事を検索する。 別に何かに興味があったわけじゃない。それでも、膨大な情報の海に飛び込んで行くのは嫌いじゃなかった。 少なくともハリボテの友人関係を築くよりはね…… 高校1年生の6月は、何となくグループの形成が終わって、さぁこれからが本当の高校生だ。みたいなテンションになる時期らしい。 フェンスを介して下を見れば何人かのグループが馬鹿みたいに大声を出してはしゃいでいた。 別に悪いとは思わない。むしろ羨ましく思う。入学初っ端でハブられた僕からしたらね…… でも僕だって最初からハブられてたわけじゃない。 そもそもハブられた理由は対した理由じゃなかった気がする。誰かを庇ったとかそんなんだ。 何故か人間は集団でいると自分が強くなったと錯覚するらしい。だから集団なら平気で人を傷つける。自分が傷つけられないように…… 少しでも自分を強く、大きく見せたいんだろう。 と、まぁ講釈たれてみたが、入学初っ端からハブられた僕は、寂しい灰色の高校生活を謳歌するはずだった。その時少女が屋上に現れなければ……ね。 今思えば、この屋上での嘘がキセキの始まりだったのかもしれない。
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