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シグマの顔が頭から消えぬまま私は眠りにつくことにした。
しかし、眠ってしまえば何もかもが嘘だったかのように、全て記憶から消えてしまうのではないかと、レイは毎日怯えていた。
お願いだから、夢で終わらせないで……。
4月7日。今日から私は高校生となる…記憶が正しければ。
昨日のことは、もう夢だったかのように、私の頭から薄れていっている…。
忘れたくないことも、忘れてはいけないことも、全部消えていく…。何もかも…消えていく…。
「今日の気分は?」
聞き覚えのある声に、なぜかゾッとしてしまった。
「……シ…グマ?」
相手も驚いたような顔で私を見ている。
「もう……忘れちゃった?」
そんな悲しそうな顔しないで…。
「ううん。そうじゃないの。私の記憶はとても脆くて、曖昧だから、あなたに会ったのも夢だったんじゃないか…って思ったの」
何を言ってるんだか…。
ひんやりとした手が私の頬に触れた。
「もうすぐ式が始まるよ。そろそろ僕たちも行かないとね」
シグマの目に、微かな揺らぎがあったような気がした…。
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