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「もぅ~、柿坂さんってば本気じゃないくせにぃ~」
「信じてくれないんだ?
俺、すっげー傷ついた……。
今夜、慰めてくれる人、半径1メートル以内にいないかなー?」
「残念ながら今日は予定があるんです。ごめんなさい」
「うわっ。
……俺、もう生きていけないかも……」
「えっ!?
えっと……、
あの……、
こ、今度でも間に合いますか?」
「間に合わないかもしれないから、お早めに」
「ふふふっ。
かしこまりました」
コピー室に踏み入れようとしていた足を素早く翻し、私は扉の陰にしゃがみ込んだ。
資料の束を抱え、可愛いらしく微笑む女の子の横顔が一瞬だけ視界に映る。
遠ざかっていく足音を聞きながら、私はゆっくりと溜息を吐き出した。
――バッカみたい。
軽いノリでチャラさが滲み出ている柿坂も、誘われたことが満更でもなく嬉しそうな企画部の女の子も。
大体、チャラ男に誘われて嬉しそうにする意味が分からないわよ!
まー、柿坂の顔立ちは整ってるような気がするし、イケメンと呼んであげなくもないけど……。
って、上から目線で私は何様よ!?
あー!もうー!!
よく解らない苛立ちを感じたまま、私は素早く立ち上がると、コピー室に足を進めた。
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