y+1=彼女の気持ち

5/12
前へ
/26ページ
次へ
  「もぅ~、柿坂さんってば本気じゃないくせにぃ~」 「信じてくれないんだ? 俺、すっげー傷ついた……。 今夜、慰めてくれる人、半径1メートル以内にいないかなー?」 「残念ながら今日は予定があるんです。ごめんなさい」 「うわっ。 ……俺、もう生きていけないかも……」 「えっ!? えっと……、 あの……、 こ、今度でも間に合いますか?」 「間に合わないかもしれないから、お早めに」 「ふふふっ。 かしこまりました」 コピー室に踏み入れようとしていた足を素早く翻し、私は扉の陰にしゃがみ込んだ。 資料の束を抱え、可愛いらしく微笑む女の子の横顔が一瞬だけ視界に映る。 遠ざかっていく足音を聞きながら、私はゆっくりと溜息を吐き出した。 ――バッカみたい。 軽いノリでチャラさが滲み出ている柿坂も、誘われたことが満更でもなく嬉しそうな企画部の女の子も。 大体、チャラ男に誘われて嬉しそうにする意味が分からないわよ! まー、柿坂の顔立ちは整ってるような気がするし、イケメンと呼んであげなくもないけど……。 って、上から目線で私は何様よ!? あー!もうー!! よく解らない苛立ちを感じたまま、私は素早く立ち上がると、コピー室に足を進めた。  
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

200人が本棚に入れています
本棚に追加