第参章

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私は何度も、ここから立ち上がり、走り去って行く幻を見ました。 今ならまだ間に合うのです。 病的な月は、今はまだ、息を潜めているのですから。 ――カアァァ 直ぐ間近で、鴉が鳴きました。 ハルキの注意が刹那、そちらへ向けられた事を、私は見逃しませんでした。 頭の後ろにハルキの視線を感じましたが、気付いた頃にはもう、外の道を走り出しておりました。 太陽は断末魔の悲鳴を上げながら、山に呑み込まれていきます。  
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