第壱章

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私は女学校に上がる少し前、姉を亡くしました。 私は大層姉を慕っていたものですから、その頃もよく花を供えに、姉の下へ行ったものです。 夏の日でした。 蝉の声と、焼け付くような日を浴びながら、墓地へ向かう坂道を上りました。 上りきると右手に大きな柳の樹があり、その下に道が続いております。 やがて墓地が見えますと、桶を備えた井戸があり、やはり其処にも大きな柳の樹があります。 水を汲むため、その井戸へ寄ると木陰はひんやりと涼しく、一息ついたのですが、 いざ水を汲もうと井戸を覗き込むと無性に怖くなりまして、随分急いで引き上げました。  
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