第壱章

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額を拭うと汗をびっしょりかいていて、いやに肌寒く感じたものですから、早々に桶の水に花を活け、離れることに致しました。 日陰から陽向へ戻ると二倍にも三倍にも熱く感じるものでしょうが、何故かその時は体の奥がしんとして、冷たくなっておりました。 姉の下へ着く頃にはもう頭が重く、やっとの思いで墓を洗い、手を合わせましたが、 帰り際、井戸の前を通る頃にはとうとう木陰に座り込んでしまいました。 夏とは言え、まだまだ盆には遠い時期でございましたから、通りかかる人もございません。 朦朧とする中、私を見つけ、助けて下さったのがハルキでございます。 ハルキもまた姉の墓に参っていたという事を知るのは、ずっと後のことでございますが。  
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