第壱章

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ここの墓地は寺と少し離れていて、歩かねばならないのですが、ハルキは私を寺まで負ぶって行ってくれたばかりか、家まで送り届けてくれました。 斯様なことになってはもう熱に浮かされた、としか言い様がございません。 熱は三日程で治まり、私は何としても礼を述べたいとの旨を父母に伝えましたが、 その時ハルキは名乗らなかったようで、私は朧げな記憶を頼りに彼を探し始めました。 背格好の似た人がいると、見ずには居られなかったものです。 それから五日程、経ったでしょうか、私は遂にハルキと巡り会いました。 何のことはなし、彼は家の近くの公園で本を読んでいたのでございます。 私が側に寄りますと、「もう風邪は良いのかい。」とハルキの方から声を掛けて下さいました。
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