第壱章

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「お昼は如何なさるのですか。」 視線に色が付いていたのなら、ハルキのそれは将に「意外」という色に染まっていたことでしょう。 「すぐにお持ちいたしますので、此処でお召し上がりになりませんか。」 彼の眼に私は滑稽に写ったことでしょう。 ハルキは静かに「ご迷惑でなければ。」と言い、この押し付けがましい提案を受け入れてくれました。 私は急いで自宅に戻り、調理場の物にこっそりとお弁当を二つ拵えるようお願いしました。父母には内密に。 自分自身と折り合いをつける方法――私はハルキと居る「理由」が欲しかったのです。  
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