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ただ帰る間際、父は更科に何かを呟いていたようだ。何を話したかは聞こえなかったし聞いていない。きっと聞いても教えてはくれない。
だけど車に乗って去り際、父が笑顔を向けていたのを見てホッとした。だから聞かない。
その後も2~3度足を運び、結婚式の日取りや結納についての相談を進めていった。今では父と更科、2人きりになった時には何か話しをしているようだ。
「まぁ今更更科…さんが司を手放すなんて考えられないしぃ?誠実ですもんね~」
「ありがと。…美緒、呼びにくいなら課長で良いと思うよ。あだ名ってことで!」
「…そう?」
「まぁ彼ならそのうちまた課長になれるだろうしね。」
「…何の話だ?」
そこへ出前の注文を終えた更科が戻ってきた。3人が顔を見合わせて笑い合う姿を不思議そうに見ている。
と、美緒が急に手を挙げて…
「課長!今日の晩ご飯は何でしょうかっ!」
と威勢良く聞いてくる。
「…酢飯の上に何やら生モノが乗ったやつだ。」
「きゃー!やったー!お寿司だ~!」
「待て、寿司とは誰も言ってない。もしかしたら卵かけご飯酢飯バージョンかもしれない。」
「…。」
この細やかな抵抗に急に黙る美緒を見て、更科は満足そうな顔をした。しかし…
「課長………………………………全然面白く…ない…」
「…ぶっ!」
「…。」
秀一郎と司は横で吹き出し、今度は更科が黙る番であった────────。
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