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「良かった…。」
「…え?」
「…嫌…なのかと…」
半ば安心したように、少し自嘲気味に笑う更科の顔を見て胸が締め付けられる。それだけは違う。
「嫌なんかじゃ…!ただ…ホントに恥ずかしくて…」
言いながら次第に俯きそうになるその顔を、更科は逃がさないようしっかりと上を向けた。
「まぁ…ちょっと優しくしすぎてるかな?わかった、これからは…覚悟しとけ。」
その衝撃的な発言と艶っぽい笑みに、また心臓がびくんと跳ねた。
更科のその余裕っぷりが悔しくて、精一杯の照れ隠しと強がりに「いじわる…」そう呟く。
しかし更科はクスクス笑って司の手を取った。
「どうする?俺は別に…ここでも良いけど。」
いたずらっぽく瞳が光る。余裕で返したいのに咄嗟の反応に戸惑い結局顔を赤くして終わる。
そんな司をさておいて、「でも腰悪くしたら困るから。」そう言って無理やり引っ張り上げられた。
「こ…虎太郎さ…!」
「さっき邪魔されたし。ちょっと限界かも。ま…悪いようにはしないから。」
「~…!」
しっかりと手を握られ強い力で引っ張られていく。だけど痛くない。嫌じゃない。
こういう時は素直に従う。それが精一杯できる意思表示だ。
そんな二人の余韻を残して…
静かに静かに扉は閉まった──。
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