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「…よいしょ…っと…」
ドスン、と重たそうな音を響かせて段ボールが床に置かれる。
「これで全部?」
「うん、トラックはもう行ってもらったよ。」
振り返りながら問い掛ける更科に、おっつけ答えるように司がひょいっと玄関から顔を出した。
2人とも少し汗が滲んでいる。
───そう、まさしく引っ越しのまっただ中。
あれからおよそ半年が経ち、司は自分の荷物を更科の…婚約者である虎太郎のマンションへと移動させてきた。
このマンションも十分広く部屋も余っていたため、別に引っ越す必要もないだろうと話し合って決めたこと。
冷蔵庫や洗濯機などの家電はすでに売り払ったし、必要最低限の荷物だけ…
と言っても女性だからか服や小物でかなりの荷物になってしまった。
今更科が重そうに置いた荷物の中身は、アルバムやら手紙やら…束になればそれなりの重量になるものがたんまり詰まっている。
それがトラックから降ろした最後の荷物だったらしい。移動のためだけに借りたトラックは、仕事が終わりすでに次の現場に向かったようだった。
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