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秀一郎が部屋を出ると、今度こそシーンとなった部屋を見回して恥ずかしくなった。
さっきまであられもない姿で眠っていた寝室だ。
何もなかったことを願うが、万万万が一…ということもあるかもしれない。
そう思うだけでいてもたってもいられずに、後を追うようにして部屋を出た。
「……あれ?はい、水。」
水を汲み寝室に戻ろうとしたところで、美緒が追っ付けリビングに登場した。
一瞬驚きを見せたが、ほんの一瞬。
まあ部屋を出ることは不思議ではないので、そのまま水を手渡した。
「あ、ありがとう…」
水を素直に受け取り、コクリ…と飲むと、冷たい水が喉を通って心地よかった。
コクリ、コクリと飲んで空になったコップを秀一郎が受け取った。
おかげで口の中の気持ち悪さが大分治まった気がする。
「何か食べる?」
そう聞かれてハッと辺りを見渡すと、見たことのない壁、見たことのないインテリア。
しかしリビングにはほとんど物はなく、むしろ寝室の方が人の住む気配があった気がする。
返事がなくキョロキョロと興味深そうに辺りを見回す美緒を見て、察したように教えてくれた。
「忙しくしているとさ、あんまり家に帰ってこないし帰ってきたとしてもすぐ寝ちゃうんだよね。だから結局あっちの方が生活臭あるかもね。で、何か食べない?」
腹が減っているのか、今度は美緒に対してではなく同意を促すようなものに変わった。
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