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部屋に山口を案内すると、食事から酒などが既に用意されていた。
山口は、いつも通り膳の前に座り、緋暮も何時もり、徳利を持ち、山口に酌をする。
「ほら、緋暮。この前言っていた、鼈甲<ベッコウ>の簪だ」
「まぁ、嬉しい///本当に、持って来て下さるなんて……また一つ、山口様の思いが伝わって来ます……本当に私を大切に思って下さっているってことが///」
「当たり前であろう///緋暮が一番だからな///」
そう言って、頬に広い手が添えられ、深々と口付けをされる。
緋暮はそっと瞳を静かに閉じた。
(単純な男だこと……さて、次は何が良いかしら……南蛮渡来の品物とか強請ってみようかしら……)
口付けが終わり、そっと山口の胸に体を預ける。
「やまぐち…さま///」
「お前は、本当に素直だな。揚羽も本当に見習うべきだ」
揚羽と言う言葉に眉間を軽く寄せる。
揚羽の客は、揚羽がつんけんしているからこそ、落としがいがあると言って、揚羽を指名するのだ。
揚羽が客と朝を迎える事など、数を数えるくらいしかない。
揚羽と床を共に出来ると言う事は、花街では自慢出来る話であり、揚羽が気を許したと言う事にもなるのだ。
(ふざけるわ……納得いかない……私が苦労して客を取っているのに、揚羽は苦労せずに花代稼いで……)
「緋暮どうかしたか?」
「いえ、つい山口様と一緒にいるから、安心してしまって///」
「そうか、そうか」
嬉しそうに笑う山口に、緋暮はにこやかに微笑むのだった。
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