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2人は揚羽に気が付いたのか、話を中断して、視線を揚羽に向ける。
「おぉ、揚羽ではないか。先ほど、派手な音が聞こえて来たが、何かあったのか?」
「これは、山口様……。いえ、何か新造が膳をひっくり返しだのでしょう……不快感を与えてしまい申し訳御座いません」
丁寧に詫びを入れる揚羽に、山口は軽く笑う。
その横で、クスクスと可笑しそうに笑う可愛らしい遊女がいる。
「あら、では、この後、新造はお仕置き部屋行きね……何をされるのか……怖い」
怖いと言って震え目尻に涙さえ浮かべる遊女に、山口は、優しく微笑む。
「緋暮は、心の優しい女子<オナゴ>だな。今夜は私が、十分に緋暮を安心させてやろう」
緋暮の肩を抱いて笑う山口に、「山口様……」と呟き、緋暮は、頬を赤くし、うっとりとした表情を見せた。
「ではな、揚羽。少しは、緋暮を見習った方が良いぞ?」
そう言って笑いながら緋暮の肩を抱いて、揚羽の横を通り過ぎ、揚羽は軽く会釈をして部屋へ戻る。
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